映画鑑賞 06 東京家族


今日シネマサンシャイン今治にて待ち構えていた映画「東京家族」を見た。
平日ではあるが、一日の「映画の日」のため20人くらいの入場と今治では初体験の大入り。
この映画をなぜ待ち構えていたかと言うと、3.11の大地震の時点で私もちょっとこの映画に関係する逸話を持っているからである。
当時まだ仕事を続けていた私が、仕事上関係のあったUSAの映画関係の雑誌「Film and Digital Times」の編集長であるJon Fauer氏(震災当日取材で来日しており、
翌日命からがらUSAへ帰国した)とのメールの中で、私から「山田洋次監督が震災のためにクランクインをまじかに控えていた本映画を脚本から見直したいから一年延期する」とのニュースを伝えた事実があったからである。一応因縁の映画ではある。
・映画の舞台
いきなり懐かしい東京の風景各所。周吉・とみこが田舎から上京して到着した品川駅コンコース。長男幸一が住む、東京のはずれ(横浜と言ってもいいが確かに東京都の町田市)のつきみ野を走る東急電車。周吉・とみこが体よく追っ払われて宿泊する高級ホテル インターコンチネンタルホテルと窓から見える横浜の夜景・特にコスモクロックの大観覧車。
後半、とみこの遺骨を持って帰った広島の島(映画の中には島の名前は出てこなかったが大崎上島)。
私の人生の環境とも両舞台とも非常に似通っており、(横浜に住み、東京近辺で仕事をし、現在田舎の今治で過ごしている)より身近に感じながら見た。
注;大崎上島へは、今治からフェリーが出ており春になったら一度映画の舞台を歩くために行く予定である。
・とみこの亡くなる病院のシーン
一月にまさに私も父をみとった経験から、死をみとる瞬間をリアル以上に感じた。医者が発する「酸素が少なくなった場合、気道確保はいかがしますか」は、まさにリアル。
・小津カット
山田洋次監督は、尊敬する小津監督の得意のカットを意図的に使ったと思われるカット。
長男幸一宅での居間とキッチンを廊下を立てに狙うカット。
東京物語での象徴的なカットである、笠智衆東山千栄子が「母さんもう帰ろうか」と語る岸壁のカットを模した、きっとインターコンチネンタルホテルのそばにある海岸べり(ふかり桟橋が背景に映っていたので)の語りのシーン。
後、多様していたワイド(街灯の柱も湾曲するほど)・ローアングルのカット。
・役者陣
正直脚本的には、「東京物語」のリメイクであると思っていたので内容的には大きくは期待はしていなかったが、本映画はいい映画だと思う。次男昌次役の妻夫木聡と恋人役紀子役の蒼井優が素晴らしい演技力で本映画を成功させたと思う。いい映画俳優である。蒼井優は、かつてより私の娘にしたい女優のNo.1である。
父周吉役の橋詰功さんと母とみこ役の吉行和子さん、両人とも現在の役者の世界ではうまい役者で私も好きなお二人ではあるが、どうしても「東京物語」の笠智衆東山千栄子と比較してしまうと・・・である。笠智衆のあの朴訥な語り部を決してうまい役者とは思えないのだが、あの映画のあのシーンでは。
・最後に周吉のこの後の余生はどうなる?
映画の中では、長男幸一の「家を増築するので東京で同居しないか」との温かい提案を受け当然ながら頑として「わしはここで暮らす」と終わるが。確かに一度も都会で暮らしたことのない人間が数日の体験で決していい思い出を抱いたとは思えない東京で暮らせるとは思えない。
現在は周吉の身の回りの世話は、隣の家族や島の親戚が行ってくれているが、隣の娘さんも今後大学へ進むとすると・・。親戚だって歳をとってくる。
周吉さん、そうは世の中ゆかないものだよ。
私の予想、母親に似て心優しい次男昌次と紀子さんがきっと島に帰ってきてくれる予感。
回りですすり泣きの聞こえた、いい映画でした。